パワーアート!? 鑑賞してきました! ~東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展~
先日、北海道立近代美術館で開催されている「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」へ行ってきました。
東山魁夷という日本画の大家の存在を知ったのは、若い頃、緑の風景の中に白い馬が描かれている絵がとてもきれいで素敵だなぁと思ったのがきっかけだったように思います。
絵の世界に詳しいわけではありませんが、東山魁夷の絵は、白馬の絵に限らず非常に心惹かれるものがあります。とても好きです。すばらしく美しい絵だなぁ…と思います。
絵の中の風景から発せられる圧倒的な空気感。
絵を見つめていると、描かれた風景のその場所で、実際に自分が佇んでいるかのような気持ちになってきます。
「濤声」…美しい水色、岩に打ち寄せる波の音、潮風、潮香、海辺の水気…
「山雲」…霧深い山奥の湿り気を帯びた冷涼な空気、樹々の匂い、流れ落ちる滝の音…
想像力がかきたてられます。イメージの世界に心を遊ばせます。
日常の雑多な事で疲弊し、枯れかかった心が蘇ります。
乾いた植木鉢にたっぷり水を与えてあげるみたいにね。
素晴らしい芸術や音楽、自然の美しさなどに触れ、歓喜・感動することで心が洗われ、バッテリーチャージできるんですねー。
この展覧会にあわせて、TVで「東山魁夷 青の旅路 ~山雲濤声への道~」という番組が放送されていましたが、その再放送を見ることができました。
唐招提寺障壁画の制作は1970年から1980年にかけて。
1970年、当時の唐招提寺の高僧(長老)から依頼を受け、鑑真和上を敬い、鑑真和上に捧げる唯一無二の障壁画を描こうと思われたようです。
6度目の渡航で、盲目になりながらも、やっと日本にたどり着いた鑑真和上をおなぐさめするために、故国中国(唐)と日本の美しい風景を描こうと決め、日本各地、そして中国へもスケッチの旅をされたそうです。
故国へとつづく日本海の穏やかな海のようすが「濤声(とうせい)」、飛騨の天生(あもう)峠の景色が「山雲(さんうん)」に描かれたとの事。
足かけ10年!!! すごいですねー。
私の好きな白馬の一連の作品は、東山魁夷がこの障壁画制作中の1972年頃、一頭の白い馬が緑の樹々に覆われた山裾の池畔に現れ、ゆっくりと歩いて消え去ったという不思議な幻想的な夢を見た事がきっかけになったそうです。
そして「白い馬は祈りの象徴、今日より明日がより深く、より明るくあるように、描くことは祈ることです、私の絵は私の祈りです。」と語ったそうです。
ああ、そうか、だからかぁ…
だからあんなに美しいんだ、だからこんなに心惹かれるんだ…
私は心の底から納得し、感動したのでした。
芸術鑑賞というと、何かとても高尚な堅苦しいものに感じられるかもしれませんが、そんなふうに考える必要は全くないと思います。
要は自分なりに楽しめばいいんじゃないでしょうか?
あ、この絵、好き…とか
あ、この色合い、いいな…とか
あ、この風景、ステキ…とか
そこからだんだん、この絵を描いた画家は誰?どんな人?どんな人生を送ったの?
この絵のモデルは誰?この絵に描かれている風景はどこ?
…とか、興味関心が広がっていくと、また奥深い楽しさを感じられたりするんですよね。
良くも悪くも、作品には作者の思いとか、エネルギーや魂みたいなものが込められていると思います。
パワースポットならぬパワーアートかも!
唐招提寺御影堂障壁画は普段めったに公開されないようです。
北海道では初!…との事。
少しでも興味があれば、是非足を運んで、素晴らしい作品に触れてみてはいかがでしょうか?(於:北海道立近代美術館 7月28日最終日です)
※北海道立近代美術館 東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展 パンフレットより